Romanticism

小4のとき、私は泉京花ちゃんと友達だった。彼女は一人っ子で金髪のお母さんと明らかにカタギじゃない風貌の義理のお父さんとカーテンが締め切られた薄暗い貸家に住んでいた。靴が散乱した玄関、ボトルガムの中身が散乱した机の上、テーブルの下に雑に落ちていた算数の90点のテスト、リビングから開いた扉から見えるダブルベットの寝室。それら一つ一つがあまりにも私の家と違いすぎて鮮烈に覚えている。「本当のお父さんはお金持ちで今は別の女の人と暮らしているんだ」って笑いながら教えてくれた京花ちゃん。私は彼女のことを一生忘れないと思う。

糖尿病だった京花ちゃんのお母さんは泉鏡花を知っていたのだろうか。泉という苗字は、本当のお父さんと義理のお父さん、どちらのものだったのだろうか